そんな大変な思いをしながらの学校生活を終え、去年3月にデビューしたわけですが、デビュー戦の記憶はありますか?
西村:確か、雨が降っていたことは覚えています。中京で、馬場が悪かったんですよ。ユキノマドンナっていう馬だったんですけど、走り終わったら骨折してしまって、登録抹消になってしまいました。
谷中:えー!それは可哀想だったね。
西村:はい。凄く残念でした…。
デビュー戦はそのような結果でしたけど、その約3ヶ月後の6月、函館で初勝利をあげましたね。
谷中:(資料を見ながら)ワールドブルー。森先生のところの馬なんだ。
西村:そうです。僕と同じ地元の馬主さんが森厩舎に馬を預けていまして、その馬主さんの馬に乗せていただく予定だったんです。結局、その馬には乗せてもらえなかったんですけど、他の馬に乗せていただいて、初勝利をあげさせてもらいました。
勝てない期間は、どんな気持ちでした?
西村:いやー、いつ勝てるんだろう?と思って、萎えてましたね。
谷中:それまでに着には来てたんだよね。じゃあ、勝つ感覚は分かっていたでしょ?
西村:何となく、ですね。でも、実際勝ったときは「あれ?勝っちゃった」って感じでした。人気もなかったので。
谷中:10番人気だもんね。レース内容は覚えてる?
西村:ハナに行っていたのが藤田さんで、僕は2番手についてたんです。気を抜くって聞いていたので、3コーナーあたりから早めに気合いをつけていったら勝てました。
初勝利をあげてから、自分の意識や行動で何か変わったところはありました?
西村:いやー、ひとつ勝って安心したのか、次の日に落馬しちゃいました。そのときは、他の方に迷惑をかけてしまって…。
初勝利の翌日に落馬するなど、なかなかアップダウンが激しいデビュー1年目ですが、振り返っていかがですか?
西村:1年目は、なんとなく過ごした感じになっていましたね。
谷中:今と1年目の自分を比較して「成長したな」って思える部分もあるでしょ?
西村:そうですね。1年目は馬に乗った感覚がまだ分からなくて、レースでの騎乗イメージが湧かなかったですけど、今は競馬で状況把握も出来るようになって来ましたし、自分がイメージした乗り方が徐々に出来るようになってきたと思います。「意思のある競馬が出来るようになった」って、先輩方にも言われるようになりましたし、弱気にならずに、周りに負けないっていう強い気持ちを持って乗れるようになったと思います。
谷中:良いじゃない。自分のイメージ通りに乗れたっていう会心のレースはある?
西村:特別戦を勝たせてもらったドリームピーチのレース(11年10月1日・サロマ湖特別)ですね。
このレースは、新聞を見ながら「このレースはこう乗って、上手くハマれば勝てるんじゃないかな」と思っていたんですけど、そのイメージ通りに乗れました。ノリさん(横山典弘騎手)の後ろに付いていって、そのままノリさんが3コーナーからスーッと外に行って捌いてくれたところを内から付いていって、4コーナーではもう完璧、みたいな。
谷中:それは気持ち良いよね。
成績も順調に伸びているし、楽しくてしょうがないんじゃないですか?
西村:いえ、まだまだですよ。今年も函館で落馬してしまって…。次の週に勝ち負けできる馬が3、4頭いたので、そこで勝って波に乗りたかったんですけど。
そうなんですか。今年の成績を見ると去年より勝ってますし、好調なイメージを持ちますけど、本人はまだまだ納得していないんですね。
西村:今年は30勝を目標にしていたので…。
谷中:ああ、だから納得いってないんだね。でも、だいぶ自分がイメージをした乗り方を出来るようになってきたみたいだし、焦らずにやっていけばいいと思うよ。そういえば、もう全競馬場で乗った?
西村:いえ、関西の競馬場はまだです。
谷中:今まで乗ってきた競馬場で、乗りやすかった競馬場はある?
西村:新潟は乗りやすかったですね。今年は新潟でけっこう勝たせてもらってますし。
谷中:それに、短い距離が得意じゃない?1200とかさ。
西村:そうですね。短い距離だと減量も効くし、その分、馬も集まりやすいですからね。
谷中:でも、西村君の成績を見ると、人気薄でも勝たせてるからね。それは凄いよ。
そうですよね。これからもガンガン成績を伸ばしていただきたいです。ということで、そろそろお時間になってしまいました…。最後に西村騎手、今後の目標があれば教えてもらえますか?
谷中:そうだね。これからの自分スタイルを教えて欲しいな。
西村:それが…、まだ自分のスタイルが分からないんですよ。今、模索中なんです(笑)。
谷中:模索中かあ…。まあ、まだ若いし、騎乗スタイルに関してはあまり「自分はこうだ」って決め過ぎなくてもいいと思うけどね。ただ、せっかく良い目をしているんだから、それを生かしたキャラで行って欲しいなあ(笑)。「依頼者との約束は必ず守る」って言って、人知れず速やかに殺しをするような…。
それは明らかにゴルゴ13ですね(笑)。
西村:アハハ(笑)。でも、決められるチャンスはしっかりとモノにするって、それを完璧に出来たらカッコ良いですもんね。
谷中:そう!それで「賞金はスイス銀行に振り込んでくれ」って(笑)。今ジョッキーで、そういうハードボイルドキャラっていないから、西村君にはそこを目指して欲しいな。
競馬に対して、貪欲で常に上を目指している西村太一騎手。現在、騎乗スタイルを模索中との事。スタイルが決まり、それがハマれば今後更なる活躍の場が広がることが出来ると感じました。今後もスクエアは西村太一騎手を応援して行きます。
1965年長野県生まれ。1985年、美浦の阿部新生厩舎の所属騎手として騎手デビュー。JRA通算成績145勝(うち障害3勝)。初騎乗は1985年3月10日にヤノリュウホウ(8着)。同年6月15日イチノスキーで初勝利。現役中に騎手生活の厳しい現実を綴った著書「崖っぷちジョッキー」を発表。現在は天間昭一厩舎の助手として活躍中。同厩舎ではレッツゴーキリシマやクラウンロゼなどを担当した実績もある。またその傍らドッグガーデン「WANだら~」経営者としても手腕を発揮している。
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