谷中:何かあったの?
菅原:いろいろあったんですけど、ひとつは「デスノート」ですね。僕、競馬学校に入る前は割りと怒りっぽいというか、プチッと切れるようなことがあったんですよ。でも、競馬学校に入ったらそんな状態じゃいけないと思って、おばあちゃんに相談したら「本当に自分が怒ったときは、嫌なことをノートに書いて、それを見返して冷静になりなさい」って言われたんです。なぜかと言うと、おばあちゃんは、おじいちゃんに対して腹が立つことがあっても、それを言えなかったらしいんです。
谷中:菅原君のおばあちゃんの時代は、そういう感じだったんだろうね。
菅原:それでおばあちゃんは、おじいちゃんに対して怒りを感じたときに、ノートに書いてそれを見返して気持ちを静めていたので、僕にもそうやって対処する方法を教えてくれたんですね。で、実際、僕も何かイヤなことがあったときにノートに書いていたんですけど、あるときそのノートを周りに見られてしまって…。漫画で「デスノート」ってあるじゃないですか。それみたいだっていうことで「デスノート、デスノート」ってからかわれて、凄く嫌な思いをしました。ノートを読まれてしまった自分も悪いんですけど、別に誰かを傷つけようと思ってやっていたわけじゃなくて、自分の怒りを抑えるために、おばあちゃんから教わったことをやっていただけなので…。そんなこともあって、学校では誰にも関わりたくないって思ったんです。
谷中:それは大変な思いをしたね。
菅原:デビューしてからも、仕事は積極的にやりましたけど、それ以外のプライベートでは、一切人と関わりたくないな、って。本当に酷い時期で、そのときは親の話も響きませんでした。
谷中:それじゃあ、俺のアドバイスも響かないよね。でも、いろいろ辛い思いをして閉鎖的になったりもしたけど、夏に北海道に行ってからは、積極的に人と話すようになったんだね。
菅原:はい。これまで美浦で話していない人とも話すようになりました。
谷中:ローカル先ってみんな開放的になって、周囲もオープンな気持ちになるから、それも良かったのかもしれないね。でも、これまで閉鎖的だったのに、自分から話しかけるっていうのもなかなか出来ることじゃないよね。そこまで変わろうと決心したのは、誰かの言葉がキッカケになったりしたの?
菅原:いえ、人の言葉ではなくて、自分の気持ちです。僕、3月11日が誕生日なんですよ。震災があった日です。
谷中:あの日が誕生日なんだ。
菅原:ああいうときって、いろいろと支援をしたいと思うじゃないですか。でも、支援をしたくても僕には力がないし、自分が被災地に行っても何も出来ずに、むしろ足手まといになるんじゃないかと思ったり…。自分がいかに無力かっていうことを感じたんです。それで、今は力がないけど、ないなら力をつけて、何か支援を出来るようになりたい、自分も人の力になりたいって強く思ったんです。
谷中:気持ちに凄い変化が起きたんだ。
菅原:そうですね。それに、周りは僕よりももっと苦しい状況で、仕事もない方々がたくさんいるんだって思ったら、騎手という仕事があるのに、1ヶ月も何もしなかった、出来なかった自分に苛立ちを覚えたんです。
谷中:このままじゃいけないって思ったんだね。
菅原:はい。これまでとは行動を変えて、もっと積極的にやっていこうと思いました。だから、これからもっと技術も欲しいし、周りから頼られる信頼も欲しいので、もっと頑張っていきたいです。
谷中:本当、菅原君は良いものを持っているから、どんどん積極的にいって欲しいな。
俳優をやっていただけあって華もあるしね。顔も整っているからモテるでしょー。聞くまでもないか(笑)。
菅原:いえ、全然モテないです(笑)。周りからは「モテるでしょ?」って言われますけど、それ止まりで(笑)。それに僕、ちょっとオタクも入っているんですよ。
谷中:あ、そうなの?
菅原:これまで勝てていなかったので、あまり自分の趣味の話なんかはしてきませんでしたけど、これからはそういう話もしていきたいと思っているんです。ジョッキー界のオタク第一人者の小島太一さんには凄く良くしてもらっていますし「僕もそうですよ」ってカミングアウトをして、太一さんと一緒にその分野を盛り上げていきたいですね。
谷中:あれ?太一と一緒の趣味ということは、コスプレもするの(笑)?
菅原:いや、自分ではしません(笑)。イベントには行きますけど、僕は見る側です(笑)。
谷中:見る側かー。じゃあまだ太一のような神様の域までは遠いな(笑)。他にも趣味はあるの?
菅原:僕、歩くことも好きなんです。この前は、札幌の駅から札幌競馬場まで歩きました。
谷中:かなりの距離じゃん!
菅原:そうですね(笑)。でも、髄膜炎になったときは歩けなくて、寝たきりだったんで「歩けるっていいなあ」って思って。今は、体を動かせる幸せを心から感じています。あと全然関係ないんですけど、僕、東京の電車で痴漢にあったこともありますよ。
谷中:本当に関係ない(笑)!でも、かなり惹きつけられるエピソードだよね。
確かに(笑)。どんな状況だったんですか?
菅原:僕が座っているところの隣に、男の人が座ってきたんです。で、何かお尻の辺りをゴソゴソし始めたので、最初は「携帯でも探しているのかな?」と思っていたんですけど、急に手が僕のお尻に来たんですよ。気持ち悪いと思って、次の駅で降りて、違う車両に乗ったんですけど、その人が付いてきてまた僕の隣に座って・・・。
谷中:完全にロックオンされてるな(笑)。
菅原:もう「怖い」と思って、同じ車両に強そうな外国の人が乗っていたので、その人に助けを求めようとも思ったんですけど、何とか自力で逃げ切りました。
谷中:痴漢はおっさん?
菅原:おっさんです。チラチラ見ながら触ってきたんです。
谷中:え?こんな感じで?
1965年長野県生まれ。1985年、美浦の阿部新生厩舎の所属騎手として騎手デビュー。JRA通算成績145勝(うち障害3勝)。初騎乗は1985年3月10日にヤノリュウホウ(8着)。同年6月15日イチノスキーで初勝利。現役中に騎手生活の厳しい現実を綴った著書「崖っぷちジョッキー」を発表。現在は天間昭一厩舎の助手として活躍中。同厩舎ではレッツゴーキリシマやクラウンロゼなどを担当した実績もある。またその傍らドッグガーデン「WANだら~」経営者としても手腕を発揮している。
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