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谷中公一のソコまで聞いちゃう!?［2011年10月13日対談記事］ 2ページ/3

菅原：レースが終わって戻るとき、馬場からスタンドを見渡して「あぁ～、レースをしていたんだ～」っていう気持ちになりました。それまでレースを見ていた方と逆じゃないですか？今まで見たことない角度からの景色だったので、凄く嬉しく思いました。

谷中：そうだね、馬場からスタンドを見るって、普通じゃ出来ないもんね。ジョッキーの特権だよね。

菅原：あの景色は忘れられないです。今でも馬場からスタンドを見ると、嬉しい気持ちになりますよ。芝のレースだと、よりスタンドに近いから更に嬉しいです（笑）。

いまだにそういう気持ちがあるんですね。デビュー戦も含めていろいろな体験をされてきたと思いますが、デビュー１年目を振り返ると、どんな年でした？

菅原：やっぱりいろいろと足りない部分がありました。技量ももちろん、勝つための気持ちが強くて、気持ちだけが先走って、空回りしていたことが多かったと思います。

谷中：そうだね。確かに最初は「勝ちたい、勝ちたい｣っていう気持ちが強過ぎるように見えていたよね。でも、途中からあまり焦らなくなったよね？段々と落ち着いてきて、良い感じだなって思っていたよ。

菅原：そうですか？ありがとうございます。

谷中：あとは菅原君の場合、巡り合わせだね。たまたまの巡り合わせで勝つことってあるんだけど、菅原君は去年そういうことが無かったんだよね。技術とかはもう十分なんだから、タイミングが上手くかみ合えば、ポンポンといけちゃうからね。そうなるとなおさら良いスパイラルになるから、焦らなくても大丈夫だよ。

菅原：はい。本当に、勝ちたい気持ちはあっても、一歩置いて冷静になることが大切なんだと思いました。初勝利のメジロマリシテンには、勝つレースの前にも乗せていただいたんですけど、そのときは、勝ち負けになる馬ということで、気持ちが先走って焦ってしまって…。

谷中：そうだったんだ。

菅原：本当なら、そこで乗り替わるはずですけど、もう一度チャンスをいただくことが出来たんです。だから、レースでは馬を抑えて、自分の行きたい気持ちも抑えながら乗っていました。

谷中：馬だけじゃなくて、自分にもハミをかけて（笑）。

菅原：はい（笑）。ようやく勝つことが出来て、乗せていただいた関係者の方たちには本当に感謝しています。

初勝利のゴールの瞬間はどうでしたか？

菅原：抜け出していたので「誰も来ないのかな？」って思いました。ゴール前では全てがスローになりました。

谷中：菅原君のことを応援している人も多いから、レースが終わってからの声援も凄かったんじゃない？

菅原：はい。嬉しかったですね。「本当に有難うございます」って思います。ずっと未勝利だったので、本当に良かったです。

その初勝利は札幌競馬場であげたということで、デビューした年は中山や新潟を中心に乗っていらっしゃいましたが、今年は北海道に遠征されましたね。

菅原：ずっと遠征する機会がなかったんですよね。しかも今年の春は、震災の影響で小倉をメインに開催していたときにまったく騎乗機会がなくて、結局1ヶ月くらい休んでいたんです。それで今年もこのまま北海道に行かなかったら、きっと内に閉じこもるって思って、思い切って師匠の保田（一隆）先生に「北海道に行かせてください」って、頼みこみました。

そうだったんですね。北海道での生活はどうでしたか？

菅原：函館から行かせてもらったんですけど、凄く有意義で心に残る遠征でした。競馬場だけじゃなく、牧場にも行かせてもらって、生産者側の仕事を見ることが出来て「ますます頑張ろう」って思いました。生産者の方たちが1年、2年かけて育ててきた経過の、最後の結果が出るレースで手綱を取るのが僕たち騎手ですからね。「馬を勝たせてあげたい」っていう気持ちが強くなりました。

谷中：改めて騎手としての原点を見つめ直すことが出来たんだね。もう、北海道の遠征から帰ってきた菅原君の顔を見たら、前と顔つきが全く違っていたからビックリしてさ。いろんな物を得て帰ってきたんだなっていうのは分かっていたけど、まあ、俺としては単純に「向こうでいいネーちゃんをつかまえたんだな」って思っていたんだけど（笑）。

菅原：アハハ（笑）！そんなことはないですよ（笑）。

谷中：それは冗談としても、仕事として何か掴んだんだなっていうのは分かったよ。あまりに以前と顔つきが違うと思ったから、北海道から帰ってきてすぐに声をかけて、そこで少し話しを聞いたけどね。凄い先輩から、心に響く話をされたんだよね？

菅原：はい。武豊さんからアドバイスをいただきました。騎手になる前から憧れていた人だったので、話をさせてもらって本当に嬉しかったです。

遠征以前に面識はあったんですか？

菅原：東京競馬場で鞍置き場が近かったので、そこで自己紹介をしたのが最初ですね。そのとき、ユタカさんのバレットをされている吉井さんが良くしてくれまして、少し話をさせてもらったんですけど、今回は函館で自分からユタカさんに声をかけました。

谷中：何て言って話しかけたの？

菅原：「もしよろしければ、お食事に連れていっていただけませんか？」って、お願いをして。

谷中：お食事に連れていっていただけませんか？って、なんか恋しているOLみたいな切り込み方をするね（笑）。

菅原：アハハ（笑）。騎手として立場も違いますし、お断りされても仕方が無いと思ってダメ元でお誘いしたんですけど、一緒に行ってくださって。それをキッカケに今度はユタカさんからお食事のお誘いをいただいたりして、本当に嬉しかったですよ！

谷中：憧れの騎手から声をかけてもらえば、そりゃ嬉しいよね。どんなことをアドバイスされたの？

菅原：例えば、調教のときでも、実戦をイメージをしながら乗ることが大事だと言われました。それからは、レースで乗ったときに自分がやれることをイメージしながら乗るようにしています。

谷中：やっぱり憧れの騎手からのアドバイスは重みが違うよね…。

谷中さん、何か表情が冴えなくないですか？

谷中：いや、俺もこれまで菅原君に対して、心に響くような言葉を投げかけてきたと思うんだけど、それが忘れられているような気がしてさ（笑）。

谷中さん、まさか武豊さんに対して嫉妬を…。

谷中：うん。嫉妬の気持ちがメラメラって（笑）。俺だって良いアドバイスをしているぞ、と（笑）。

菅原：すみません（笑）。谷中さんからアドバイスをいただいていた頃は、まだ僕自身が閉鎖的で、心が閉じていたんだと思います。実は、競馬学校に入ってから非積極的になって「人と関わりたくない」って、閉鎖的になった時期があって。

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