東京大学名誉教授が射抜くワイド1点

[2012年3月4日]

【弥生賞】人気薄のアノ馬から狙ってみる

ひところ1月2月の冬競馬は馬券を買わなかった時期がある。まだ電話投票がなかったころだった。厳寒期に走る馬も可哀そうだが、寒風ふきすさぶなかを場外馬券場に足を運ぶ馬券大好き人間も哀れだった。でも、電話やパソコンでも馬券が買えるようになれば、その類の人間は切ないほど弱い。ついつい馬券に手をそめ、奈落にはまる。それでも、冬競馬はそこはかとなく興がのらないものだ。


ところが、弥生賞がめぐって来ると、春一番の到来を感じる。それはひとかどの競馬ファンとしての習性というものだろう。とりわけ今年のような苛酷なほどの冷気に凍えた冬を過ごせば、いかにも春の息吹が気分をもりあげる。


ディープインパクト産駒が(4)(7)(10)(12)(15)と5頭も出走する。ディープは小柄だったから、とびきり見栄えがする馬だったわけではない。彼のなによりの取柄はその強靭な心肺機能にあったという。2歳の若駒のときから、古馬5冠を制覇したころのテイエムオペラオーと同級の心肺機能があったという説すらある。だから、鍛える以前の若駒にも、その資質がそっくり受け継がれるのかもしれない。


おそらく勝つのはディープ産駒であり、なかでも2000メートル2戦2勝の(12)を狙わない手はない。この2週、トランセンド、トゥザグローリーと大本命馬が不可解な惨敗をしたから、またもやの疑惑がないわけではない。唯一の不安材料は2ヶ月の休養明けだけ。あっさり勝たれても不思議はないのだから、屁理屈はつけないでおこう。もう1頭は人気薄から(11)ブリルアウトを狙ってみる。新馬戦を逃げ切り勝ちしただけだが、最後は突き放すほどの圧巻だった。ひょっとしたら、とてつもない大物かもしれない。人気になってからでは遅すぎる。ここは先物買いに徹して、春一番の美酒に酔ってみたい。


(11)-(12) ワイド1点で勝負する

【by本村凌二】

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『ワイドの凌』よりひと言

昭和の「エースの錠」が拳銃を片手にのさばってから半世紀が流れた。平成を経て令和の世は馬券を片手に「ワイドの凌」でいきたい。狙い目はできるだけ少なく、基本はあくまでワイド1点勝負。ワイドは当たり馬券が3つもあるのだから、的は見えやすい。馬券は手を拡げると、あの馬も買っておけばよかったと悔やまれる。できるだけ狙い目を絞れば、そんな後悔もせずにすむ。人生は短いのだから、ストレスをかかえこまず、心ゆたかに競馬も馬券も楽しむこと。それがこの世界で長生きする秘訣である。

本村 凌二

1947年5月1日、熊本県八代市生まれ。
東京大学名誉教授。
専門は古代ローマの社会史。専門の近著に『ローマ帝国人物列伝』『一冊でまるごとわかるローマ帝国』

「もし馬がいなかったら、21世紀も古代だった」という想念におそわれ書き起こした『馬の世界史』が2001年JRA馬事文化賞を受賞。その他の競馬関連の近著に『競馬の世界史 - サラブレッド誕生から21世紀の凱旋門賞まで』(中公新書)。20世紀のペンネームは本村雅人。

ハイセイコーが出走した1973年の第40回東京優駿日本ダービーから、第57回を除き、毎年東京競馬場でライブ観戦するなど、日本の競馬にも造詣が深い。
夏から秋にかけてはヨーロッパで過ごす事が多く、ダンシングブレーヴが制した、あの伝説の凱旋門賞や、タイキシャトルが勝ったジャック・ル・マロワ賞。また、シーキングザパールが日本調教馬として初めて海外GI競走を制したモーリス・ド・ギース賞などをも現地でライブ観戦している。競馬と酒をこよなく愛する、知る人ぞ知る競馬の賢人。

伝説の凱旋門賞
勝ち馬ダンシングブレーヴの他、ベーリング、シャーラスタニ他、JCにも参戦した鉄女トリプティク、そして日本ダービー馬シリウスシンボリも含め出走馬15頭中11頭がGI馬という当時としては最強のメンバーが集結したレース。そんな好メンバーの中、直線入り口最後方から全馬をまとめて差し切り勝ち、しかも当時のコースレコードのおまけ付だった。

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