東京大学名誉教授が射抜くワイド1点

[2012年2月19日]

【フェブラリーS】私の狙いは若い世代にある

昭和22年(1947年)は有史以来最大の出生数を誇る。出征した兵士たちが帰国して種牡馬のように活躍したのだから、おそらく空前絶後になる。私が小学生のときは50人クラスなど当たり前だった。

私の奉職する大学には歴史学研究室がある。総勢12人のうち3人が本年3月末で定年退職する。いわゆる団塊の世代のトップバッターがこぞって大学を去る。そこで、この日・月曜と1泊2日で箱根の温泉旅行となった。3時前にはホテルに着いて、フェブラリーSはそこでテレビ観戦になる。

そういえば、去年のフェブラリーSは吉祥寺の居酒屋「青夷」の競馬仲間総勢8人で東京競馬場にくりだした。来賓席での観戦だったので、ゆったり酒を飲みながら楽しみ、帰りは府中の居酒屋でやけ酒をあおって騒いだものだ。 あれから1年を経ても、(15)トランセンドの強さは相変わらずである。一昨年の優勝馬(9)エスポワールシチーにやや年齢的な衰えが感じられるせいか、(15)が断然人気になっている。

暖簾をくぐると、今年最初のGIとあって、常連のたまりが賑わっている。謎の馬券師リンさんは三連単で(15)1着(9)2着の固定で3着に4、5頭を選ぶらしい。データ派の口撃機関銃ヤマはひそかに(16)テスタマッタを狙うと息まいている。俺のデータに乗らないと損するぞ、と目で脅しをかけているのが小憎らしい。これで馬券が当たったりすると、サブちゃんのように鼻の穴をふくらまして自慢げになるから、ますます小憎らしくなる。

口撃機関銃の鼻の穴は小さくしてもらうことにして、私の狙いは若い世代にある。(2)タガノロックオン(13)グランプリボスの4歳馬2頭と(14)トウショウカズンの5歳馬1頭を選ぶ。さらに3頭のなかから、もっとも人気薄の(2)に絞る。父は十年ほど前、ヨーロッパのGIマイル戦を勝ちまくったロックオブジブラルタル。血統を考えれば、GIマイル戦で3着までに入ることなど夢ではない。


(2)-(15) ワイド1点を狙う。

(15)1着固定、2着3着に(2)(9)(10)(13)(14)を組み込む、三連単20点買いで遊ぶ。

【by本村凌二】

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『ワイドの凌』よりひと言

昭和の「エースの錠」が拳銃を片手にのさばってから半世紀が流れた。平成を経て令和の世は馬券を片手に「ワイドの凌」でいきたい。狙い目はできるだけ少なく、基本はあくまでワイド1点勝負。ワイドは当たり馬券が3つもあるのだから、的は見えやすい。馬券は手を拡げると、あの馬も買っておけばよかったと悔やまれる。できるだけ狙い目を絞れば、そんな後悔もせずにすむ。人生は短いのだから、ストレスをかかえこまず、心ゆたかに競馬も馬券も楽しむこと。それがこの世界で長生きする秘訣である。

本村 凌二

1947年5月1日、熊本県八代市生まれ。
東京大学名誉教授。
専門は古代ローマの社会史。専門の近著に『ローマ帝国人物列伝』『一冊でまるごとわかるローマ帝国』

「もし馬がいなかったら、21世紀も古代だった」という想念におそわれ書き起こした『馬の世界史』が2001年JRA馬事文化賞を受賞。その他の競馬関連の近著に『競馬の世界史 - サラブレッド誕生から21世紀の凱旋門賞まで』(中公新書)。20世紀のペンネームは本村雅人。

ハイセイコーが出走した1973年の第40回東京優駿日本ダービーから、第57回を除き、毎年東京競馬場でライブ観戦するなど、日本の競馬にも造詣が深い。
夏から秋にかけてはヨーロッパで過ごす事が多く、ダンシングブレーヴが制した、あの伝説の凱旋門賞や、タイキシャトルが勝ったジャック・ル・マロワ賞。また、シーキングザパールが日本調教馬として初めて海外GI競走を制したモーリス・ド・ギース賞などをも現地でライブ観戦している。競馬と酒をこよなく愛する、知る人ぞ知る競馬の賢人。

伝説の凱旋門賞
勝ち馬ダンシングブレーヴの他、ベーリング、シャーラスタニ他、JCにも参戦した鉄女トリプティク、そして日本ダービー馬シリウスシンボリも含め出走馬15頭中11頭がGI馬という当時としては最強のメンバーが集結したレース。そんな好メンバーの中、直線入り口最後方から全馬をまとめて差し切り勝ち、しかも当時のコースレコードのおまけ付だった。

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