東京大学名誉教授が射抜くワイド1点

[2023年12月23日]

【有馬記念】今年のグランプリはインが得!?

十七年前の12月23日(土)、私の手を握りながら母が息をひきとった。翌日は有馬記念、しかもディープインパクトのラストランの日だった。来賓室に招待されていたが、もちろん観戦に行くわけにはいかない。数日後の葬式で喪主として挨拶し、折にふれ母から聞かされていた「陰徳いんとく」(人にしてやったことはすぐに忘れてひけらかさないこと)の心がけの話をした。それを聴いていたお坊さんから「いい訓話ですね、もっと詳しく話してください」と請われ、苦笑したものだ。

今年のグランプリもクリスマスイヴの日になった。引退のイクイノックスと休養のリバティアイランドの2強が出ないので、混戦模様は仕方がないが、馬券としてはがぜん面白い。口撃機関銃のヤマさんは、⑩ジャスティンパレスか⑮スルーセブンシーズかさんざん迷ったあげく⑮にするらしい。ドリームジャーニー産駒らしい瞬発力とスタミナを兼ね揃えており、中山2500mの舞台にぴったしとか。相手は⑩1頭で、馬連1点が勝負馬券だが、単勝・3連複・3連単も買うらしい。

ギャンブル狂師ミノ先生は、上りのキレを重視して、内枠から余力が残りそうな①ソールオリエンスから、サ行の有力馬4頭②シャフリヤール⑩、⑮、⑯スターズオンアースに馬連流しでいくという。

穴党専科のマスター・ジュンは、初めて一線級の牡馬と走るが、相手なりに走れそうな3歳牝馬の⑪ハーパーに注目するらしい。

さて、本日の命日に亡母をしのんで、今年の1頭は遺訓にちなんで「内得いんとく」にする。1枠①ソールオリエンスは文句なく内得いんとくの恩恵に値する馬だ。しかも、今春の皐月賞で1枠①で優勝しているのだから、中山競馬場はことさら験がいい。

もう1頭は、2強を欠くグランプリで最強馬にふさわしいとなると、初夏のグランプリ宝塚記念2・3着馬の⑮スルーセブンシーズと⑩ジャスティンパレスは出色。なかでも前走の凱旋門賞、ロンシャンの深い芝で58キロを背負いながら33秒3で「あわや!」と思わせた5歳牝馬⑮スルーセブンシーズの豪脚には瞠目する。内得いんとくと豪脚の祝杯をあびたいものですな。


有馬記念
①-⑮ ワイド1点で勝負する
①-⑮ 2頭軸の3連複総流し14点で遊ぶ


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『ワイドの凌』よりひと言

昭和の「エースの錠」が拳銃を片手にのさばってから半世紀が流れた。平成を経て令和の世は馬券を片手に「ワイドの凌」でいきたい。狙い目はできるだけ少なく、基本はあくまでワイド1点勝負。ワイドは当たり馬券が3つもあるのだから、的は見えやすい。馬券は手を拡げると、あの馬も買っておけばよかったと悔やまれる。できるだけ狙い目を絞れば、そんな後悔もせずにすむ。人生は短いのだから、ストレスをかかえこまず、心ゆたかに競馬も馬券も楽しむこと。それがこの世界で長生きする秘訣である。

本村 凌二

1947年5月1日、熊本県八代市生まれ。
東京大学名誉教授。
専門は古代ローマの社会史。専門の近著に『ローマ帝国人物列伝』『一冊でまるごとわかるローマ帝国』

「もし馬がいなかったら、21世紀も古代だった」という想念におそわれ書き起こした『馬の世界史』が2001年JRA馬事文化賞を受賞。その他の競馬関連の近著に『競馬の世界史 - サラブレッド誕生から21世紀の凱旋門賞まで』(中公新書)。20世紀のペンネームは本村雅人。

ハイセイコーが出走した1973年の第40回東京優駿日本ダービーから、第57回を除き、毎年東京競馬場でライブ観戦するなど、日本の競馬にも造詣が深い。
夏から秋にかけてはヨーロッパで過ごす事が多く、ダンシングブレーヴが制した、あの伝説の凱旋門賞や、タイキシャトルが勝ったジャック・ル・マロワ賞。また、シーキングザパールが日本調教馬として初めて海外GI競走を制したモーリス・ド・ギース賞などをも現地でライブ観戦している。競馬と酒をこよなく愛する、知る人ぞ知る競馬の賢人。

伝説の凱旋門賞
勝ち馬ダンシングブレーヴの他、ベーリング、シャーラスタニ他、JCにも参戦した鉄女トリプティク、そして日本ダービー馬シリウスシンボリも含め出走馬15頭中11頭がGI馬という当時としては最強のメンバーが集結したレース。そんな好メンバーの中、直線入り口最後方から全馬をまとめて差し切り勝ち、しかも当時のコースレコードのおまけ付だった。

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