東京大学名誉教授が射抜くワイド1点

[2023年6月3日]

【安田記念】祝い酒は何色に染まる?

先週の第90回日本ダービーはなんとも言い難い結末になった。おそらく優勝したタスティエーラよりも惜敗して二冠を逃したソールオリエンスよりも、完敗でも完走して直後に倒れて息を引きとったスキルヴィングの記憶が強烈に残るのではないだろうか。

競走馬の心不全はめずらしいことではないが、レース中のことだから、ことさら心を揺さぶったのだろう。かの17歳のディープインパクトも厩舎内にて心不全で亡くなっているのだ。

スキルヴィングはG2の青葉賞優勝馬としてしか記録に残らないだろうが、競走馬の悲運をファンの胸に刻んだ馬として、圧勝を期待させながら天皇賞(秋)の最終コーナーで骨折して安楽死処分されたサイレンススズカとともに、いつまでも記憶に残る競走馬になるだろう。せめて彼の馬名はしっかり心に留めて冥福を祈りたいものだ。

クラシック戦線も一段落しても、今週はG1馬が10頭も出走する春のマイル王決定戦がある。台風2号の影響で土曜の早朝まで豪雨に見舞われた馬場状態がどこまで乾くか、微妙である。

口撃機関銃ヤマさんは、ひどい混戦で1馬身差内に数頭がなだれこむような難解なレースと悩まし気である。ヴィクトリアM組では、1・2着の⑱ソングライン・⑤ソダシよりも、競馬をしていない⑫ナミュールに魅力を感じるらしい。でも、良馬場なら④セリフォス、重馬場なら⑩ソウルラッシュと決めていたらしく、重巧者の⑩が本命という。相手本線は、④、⑫、⑭シュネルマイスターで、単勝・馬連・3連複・3連単でいくらしい。

ギャンブル狂師ミノ先生は、④セリフォス本命。このレースはドバイ帰りが強くて、父ダイワメジャーもドバイ帰りで安田記念を制したという。単複1点で狙うという。

穴党専科のマスターは、大外でも昨年の覇者⑱ソングラインに注目するという。関東馬なので移動がないのがいいとか。それに東京のマイル戦に実績のある⑪イルーシヴパンサーにも気があるらしく、2頭軸3連複総流しという。でも、本心は⑤ソダシに勝ってもらいたいとか、可愛いところもある。

私も、1馬身差に10頭ぐらいは並びそうなら、体調が良さそうで重巧者の⑩ソウルラッシュを抜擢したい。父ルーラーシップはまさしく重馬場の超名馬だった。いささか太目で走った前走だが、ここは絞れて絶好調の予感。唯一の不安はヤマさんと狙いが同じところだ。相手は東京マイル3戦3勝の3歳馬⑨シャンパンカラーに軽い重量を生かして好走してほしい。黄色2頭が祝い酒のシャンパン色にそまってもらいたいものだ。


安田記念
⑨-⑩ ワイド1点で勝負する
⑨-⑩ 2頭軸の3連複総流し16点で遊ぶ


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『ワイドの凌』よりひと言

昭和の「エースの錠」が拳銃を片手にのさばってから半世紀が流れた。平成を経て令和の世は馬券を片手に「ワイドの凌」でいきたい。狙い目はできるだけ少なく、基本はあくまでワイド1点勝負。ワイドは当たり馬券が3つもあるのだから、的は見えやすい。馬券は手を拡げると、あの馬も買っておけばよかったと悔やまれる。できるだけ狙い目を絞れば、そんな後悔もせずにすむ。人生は短いのだから、ストレスをかかえこまず、心ゆたかに競馬も馬券も楽しむこと。それがこの世界で長生きする秘訣である。

本村 凌二

1947年5月1日、熊本県八代市生まれ。
東京大学名誉教授。
専門は古代ローマの社会史。専門の近著に『ローマ帝国人物列伝』『一冊でまるごとわかるローマ帝国』

「もし馬がいなかったら、21世紀も古代だった」という想念におそわれ書き起こした『馬の世界史』が2001年JRA馬事文化賞を受賞。その他の競馬関連の近著に『競馬の世界史 - サラブレッド誕生から21世紀の凱旋門賞まで』(中公新書)。20世紀のペンネームは本村雅人。

ハイセイコーが出走した1973年の第40回東京優駿日本ダービーから、第57回を除き、毎年東京競馬場でライブ観戦するなど、日本の競馬にも造詣が深い。
夏から秋にかけてはヨーロッパで過ごす事が多く、ダンシングブレーヴが制した、あの伝説の凱旋門賞や、タイキシャトルが勝ったジャック・ル・マロワ賞。また、シーキングザパールが日本調教馬として初めて海外GI競走を制したモーリス・ド・ギース賞などをも現地でライブ観戦している。競馬と酒をこよなく愛する、知る人ぞ知る競馬の賢人。

伝説の凱旋門賞
勝ち馬ダンシングブレーヴの他、ベーリング、シャーラスタニ他、JCにも参戦した鉄女トリプティク、そして日本ダービー馬シリウスシンボリも含め出走馬15頭中11頭がGI馬という当時としては最強のメンバーが集結したレース。そんな好メンバーの中、直線入り口最後方から全馬をまとめて差し切り勝ち、しかも当時のコースレコードのおまけ付だった。

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