東京大学名誉教授が射抜くワイド1点

[2019年10月5日]

【凱旋門賞】ロンシャンの馬券では…

9月初めから、アテネ、ローマをまわってロンドンに来た。地中海周辺の暑さのなかにいたせいかロンドンの涼しさは快適だった。そんな日々を半月近く過ごした末に、おそらく身体を冷やしたのだろう。多少の風邪薬では効果がなく、とうとう熱をだしてしまった。この月曜日には、ロンドン大学での仕事を終えてホテルに帰ると、とうとう六時から翌朝の九時まで夕食も朝食もとらずに、15時間もひたすら寝つづけた。トイレこそ起きたが、ほとんど眠っていたのだ。ところが、それがよかったのか、完調とまでいかないがかなり持ち直したのである。なんとしてもロンシャンに行かねばという執念のたまものではないだろうか。

そんなわけで、金曜日にはパリに来た。こちらでは史上初の凱旋門賞3連覇がかかる5歳牝馬⑧エネイブルの話題でもちきりである。もちろん、それに迫るのは3歳牡馬⑩ジャパンをはじめどの馬かという話題もある。しかし、そのなかに日本馬3頭はまったくというほど入っていない。④キセキがトライアルのフォア賞でふがいない負け方をしたので、日本馬がどれも眼中にないのだろう。

でも、ラグビーWCでロシアもアイルランドも負かしたのはどうなのか。日本の競馬の水準はラグビーよりもはるかに上をいっているのだ。結局、目の前で強いところを見せるしかないのだろう。この十数年、欧米の馬は日本に来ても、まったく勝てないどころか、5着まですら来れないでいることは忘れないでほしいものだ。

吉祥寺の居酒屋「青夷」の競馬常連組から、今回はスポーツ博識家のナベちゃんが来る。凱旋門賞はどうしても観たかったというから、いい心がけである。中年女性2人と男性1人に古老1人の日本人4人組での観戦。観戦後の夕食がことさら美味しいことを願ってやまない。

世界広しといえども、2400メートルを走って2分21秒を切ったのは2頭しかいない。いうまでもなく世界レコードで決着した昨年のJCでのアーモンドアイと④キセキである。前哨戦の負けは、もしかしたら粘り強いところを見せまいとした馬主・調教師側の作戦と考えれば、期待がもてる。しかも、重馬場の菊花賞を勝った馬だから、ロンシャンの重い芝にも適性がありそうである。相手は人気の最強牝馬⑧はのぞいて、軽量で走れる3歳牡馬⑩ジャパンにする。ロンシャンの馬券では、日本馬3頭の④、⑤ブラストワンピース、⑥フィエールマンはまるで人気がない。こんなときは複勝を買えばけっこう高配当なのだが。

ともあれ、⑧エネイブルの史上初の凱旋門賞3連覇が実現したら喜んであげたいと思う。

凱旋門賞

④-⑩ ワイド1点で勝負する

日本馬の④ ⑤ ⑥ の複勝を買って遊ぶ

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『ワイドの凌』よりひと言

昭和の「エースの錠」が拳銃を片手にのさばってから半世紀が流れた。平成を経て令和の世は馬券を片手に「ワイドの凌」でいきたい。狙い目はできるだけ少なく、基本はあくまでワイド1点勝負。ワイドは当たり馬券が3つもあるのだから、的は見えやすい。馬券は手を拡げると、あの馬も買っておけばよかったと悔やまれる。できるだけ狙い目を絞れば、そんな後悔もせずにすむ。人生は短いのだから、ストレスをかかえこまず、心ゆたかに競馬も馬券も楽しむこと。それがこの世界で長生きする秘訣である。

本村 凌二

1947年5月1日、熊本県八代市生まれ。
東京大学名誉教授。
専門は古代ローマの社会史。専門の近著に『ローマ帝国人物列伝』『一冊でまるごとわかるローマ帝国』

「もし馬がいなかったら、21世紀も古代だった」という想念におそわれ書き起こした『馬の世界史』が2001年JRA馬事文化賞を受賞。その他の競馬関連の近著に『競馬の世界史 - サラブレッド誕生から21世紀の凱旋門賞まで』(中公新書)。20世紀のペンネームは本村雅人。

ハイセイコーが出走した1973年の第40回東京優駿日本ダービーから、第57回を除き、毎年東京競馬場でライブ観戦するなど、日本の競馬にも造詣が深い。
夏から秋にかけてはヨーロッパで過ごす事が多く、ダンシングブレーヴが制した、あの伝説の凱旋門賞や、タイキシャトルが勝ったジャック・ル・マロワ賞。また、シーキングザパールが日本調教馬として初めて海外GI競走を制したモーリス・ド・ギース賞などをも現地でライブ観戦している。競馬と酒をこよなく愛する、知る人ぞ知る競馬の賢人。

伝説の凱旋門賞
勝ち馬ダンシングブレーヴの他、ベーリング、シャーラスタニ他、JCにも参戦した鉄女トリプティク、そして日本ダービー馬シリウスシンボリも含め出走馬15頭中11頭がGI馬という当時としては最強のメンバーが集結したレース。そんな好メンバーの中、直線入り口最後方から全馬をまとめて差し切り勝ち、しかも当時のコースレコードのおまけ付だった。

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