東京大学名誉教授が射抜くワイド1点

[2019年6月1日]

【安田記念】ローマ人の知恵を競馬に生かすなら…

ダービーのサートゥルナーリアの4着はひどくショックであった。出遅れなど予想もしなかったから、言葉が出ない。出遅れさえなければ、3着はあったし、馬券も獲れた人は多かっただろう。でも、優勝は無理だったのではないだろうか。ロードカナロア産駒の距離の壁が重くのしかかったような気がした。

ところで、話は変わるが、古代ギリシアの敗戦将軍は帰国しなかったという。祖国に帰っても追放か処刑かだから、亡命するしかなかったのだ。これに比べてローマでは敗戦将軍でも温かく迎えられたという。彼らが自分の汚名をそそぐために、次の戦いで死にもの狂いで活躍してくれれば、優れた戦果を期待できたからだ。そのため、ギリシアの諸ポリスは大国になれなかったが、ローマは世界帝国まで築いたのである。

このローマ人の知恵を競馬に生かすなら、レーン騎手の今回の⑧ステルヴィオには大いに期待するものがある。いやしくも3歳でマイルCを勝ったG1馬。しかも、サートゥルナーリアと同じくロードカナロア産駒ではないか。2強が立ちふさがるから、勝てなくても3着まで来れば上出来なのだ。

ダービーが終われば、居酒屋「青夷」の競馬常連組もどこか気が抜けたかのようだ。それでも、稀なほどの⑭アーモンドアイと⑮ダノンプレミアムの2強対決となれば、血が騒ぎだすのは仕方がない。口撃機関銃ヤマなどはひたすら⑭の死角探しに余念がない。とりわけ凱旋門賞断念の中距離路線からマイル路線への変更が気になるらしい。夏場に強いステイゴールド産駒の⑤インディチャンプを軸にして、あくまで⑮が本線、⑭は薄めの押さえでいくという。ギャンブル教師ミノ先生は、過去のレースをふりかえれば、8番人気以下が必ず3着までにからむというデータを持ち出し、⑭と⑮の2頭軸に人気薄の数頭に流すらしい。もっぱら穴狙いのマスターは前走がよかった⑩フィアーノロマーノをひそかに狙っているとか。

マイル戦線なら甲乙つけがたい2強だが、ここはデータ派のヤマ師の警告に従って⑮ダノンプレミアムを狙うことにしよう。もちろんアーモンドアイには勝ってほしいが、馬券は別である。


安田記念

⑧-⑮ ワイド1点で勝負する

⑧⑭⑮の3連単ボックス6点で遊ぶ

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『ワイドの凌』よりひと言

昭和の「エースの錠」が拳銃を片手にのさばってから半世紀が流れた。平成を経て令和の世は馬券を片手に「ワイドの凌」でいきたい。狙い目はできるだけ少なく、基本はあくまでワイド1点勝負。ワイドは当たり馬券が3つもあるのだから、的は見えやすい。馬券は手を拡げると、あの馬も買っておけばよかったと悔やまれる。できるだけ狙い目を絞れば、そんな後悔もせずにすむ。人生は短いのだから、ストレスをかかえこまず、心ゆたかに競馬も馬券も楽しむこと。それがこの世界で長生きする秘訣である。

本村 凌二

1947年5月1日、熊本県八代市生まれ。
東京大学名誉教授。
専門は古代ローマの社会史。専門の近著に『ローマ帝国人物列伝』『一冊でまるごとわかるローマ帝国』

「もし馬がいなかったら、21世紀も古代だった」という想念におそわれ書き起こした『馬の世界史』が2001年JRA馬事文化賞を受賞。その他の競馬関連の近著に『競馬の世界史 - サラブレッド誕生から21世紀の凱旋門賞まで』(中公新書)。20世紀のペンネームは本村雅人。

ハイセイコーが出走した1973年の第40回東京優駿日本ダービーから、第57回を除き、毎年東京競馬場でライブ観戦するなど、日本の競馬にも造詣が深い。
夏から秋にかけてはヨーロッパで過ごす事が多く、ダンシングブレーヴが制した、あの伝説の凱旋門賞や、タイキシャトルが勝ったジャック・ル・マロワ賞。また、シーキングザパールが日本調教馬として初めて海外GI競走を制したモーリス・ド・ギース賞などをも現地でライブ観戦している。競馬と酒をこよなく愛する、知る人ぞ知る競馬の賢人。

伝説の凱旋門賞
勝ち馬ダンシングブレーヴの他、ベーリング、シャーラスタニ他、JCにも参戦した鉄女トリプティク、そして日本ダービー馬シリウスシンボリも含め出走馬15頭中11頭がGI馬という当時としては最強のメンバーが集結したレース。そんな好メンバーの中、直線入り口最後方から全馬をまとめて差し切り勝ち、しかも当時のコースレコードのおまけ付だった。

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