東京大学名誉教授が射抜くワイド1点

[2016年2月20日]

【フェブラリーS】負けたはずが……

日曜日になると、朝からワインを飲んで軽くおつまみしながら、ほろ酔い機嫌になる。競馬場に行かないときは、2時ごろにはパソコンの前に座って馬券を入力する。

先週の京都記念は狙った2頭とも沈み、共同通信杯はイモータルこそ2着に来たものの、ほぼ絶対視されていた有力2頭が着外に消えた。二レースとも外れたのだから、負けたわけだ。

翌日、銀行口座に入金しようとして、まず残額を確認したら、損したはずなのに減っていないのだ。思い当たるのは、もはや酔ってこっくりやっていたので、最後の送金確認のキーボードにふれなかったのだろう。もし当たっていれば悔しい思いをいただろうが、まずは外れて幸運だったというわけだ。

年明け最初のG1フェブラリーSは居酒屋「青夷」の競馬軍団総出でドレスコード付きの観戦祭り。そのせいか馬券師たちの予想もいつになく華やいでいる。データ派の口撃機関銃ヤマは重賞勝のない馬は用なしで、⑦ノンコノユメは楽勝さえありうると鼻息が荒い。さらに、三連覇のかかる③コパノリッキーはもうやピークは過ぎたと断言する。恐妻家のギャンブル狂師ミノ先生は休養明け⑤ベストウォーリアの鉄砲実績に信頼するとか。マンハッタンカフェ大好き馬券女師ワフさんは8歳馬でも⑩グレープブランデーにする一途さがけなげなりかな。逃げ馬好きのマスターは武豊騎乗で③にはかなり強気でのぞむらしい。

多士済々だが、たしかにルメール騎乗の⑦は不動の本命馬だろう。あとはデムーロ騎乗の新星⑭モーニンも怖いが、前走それと重量3キロ差でも2馬身半差の3着だった古豪⑩のねばりを狙ってみる。同じ馬券になりそうなワフさんにもらったバレンタインチョコが吉と出ればいいが、誰かが派手に当たって、レース終了後の酒宴がもりあがることを期待しよう。


フェブラリーS

⑦―⑩ワイド1点で勝負する


⑦⑩ 2頭軸の3連複総流しで遊ぶ

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『ワイドの凌』よりひと言

昭和の「エースの錠」が拳銃を片手にのさばってから半世紀が流れた。平成を経て令和の世は馬券を片手に「ワイドの凌」でいきたい。狙い目はできるだけ少なく、基本はあくまでワイド1点勝負。ワイドは当たり馬券が3つもあるのだから、的は見えやすい。馬券は手を拡げると、あの馬も買っておけばよかったと悔やまれる。できるだけ狙い目を絞れば、そんな後悔もせずにすむ。人生は短いのだから、ストレスをかかえこまず、心ゆたかに競馬も馬券も楽しむこと。それがこの世界で長生きする秘訣である。

本村 凌二

1947年5月1日、熊本県八代市生まれ。
東京大学名誉教授。
専門は古代ローマの社会史。専門の近著に『ローマ帝国人物列伝』『一冊でまるごとわかるローマ帝国』

「もし馬がいなかったら、21世紀も古代だった」という想念におそわれ書き起こした『馬の世界史』が2001年JRA馬事文化賞を受賞。その他の競馬関連の近著に『競馬の世界史 - サラブレッド誕生から21世紀の凱旋門賞まで』(中公新書)。20世紀のペンネームは本村雅人。

ハイセイコーが出走した1973年の第40回東京優駿日本ダービーから、第57回を除き、毎年東京競馬場でライブ観戦するなど、日本の競馬にも造詣が深い。
夏から秋にかけてはヨーロッパで過ごす事が多く、ダンシングブレーヴが制した、あの伝説の凱旋門賞や、タイキシャトルが勝ったジャック・ル・マロワ賞。また、シーキングザパールが日本調教馬として初めて海外GI競走を制したモーリス・ド・ギース賞などをも現地でライブ観戦している。競馬と酒をこよなく愛する、知る人ぞ知る競馬の賢人。

伝説の凱旋門賞
勝ち馬ダンシングブレーヴの他、ベーリング、シャーラスタニ他、JCにも参戦した鉄女トリプティク、そして日本ダービー馬シリウスシンボリも含め出走馬15頭中11頭がGI馬という当時としては最強のメンバーが集結したレース。そんな好メンバーの中、直線入り口最後方から全馬をまとめて差し切り勝ち、しかも当時のコースレコードのおまけ付だった。

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