東京大学名誉教授が射抜くワイド1点

[2015年10月3日]

【スプリンターズSほか】狙い馬は両極端でヒヤヒヤものだ

10月4日の日曜日はなんといっても凱旋門賞の日だ。五歳牝馬トレヴにとって史上初の3連覇の偉業がかかる大一番。あいにく日本馬の出走はないが、有力馬の故障がやたらと目につく日本の硬い馬場のせいだという指摘には傾聴させるものがある。

9月13日のロンシャン競馬場で目の前で見た女傑トレヴ。G1だがトライアルにすぎないヴェルメイユ賞を58.5キロ背負って6馬身差で圧勝した。あの強烈さが目に焼きついているせいで、⑨トレヴが優勝する、とほぼ確信している。良馬場でも重馬場でも強いのだから、90%は固い。

もし負けるとしたら、軽量で参戦できる3歳馬の仏ダービー馬⑬ニューベイ、英ダービー馬⑯ゴールデンホーン(重なら出走回避予定)、愛ダービー馬ジャックホッブス(不出走)の3頭だろう。なかでもニューベイに最も期待がかかる。

パリの留学生に€100を預けてきたから、メールで頼むので、わくわくしている。密かに穴と狙うのが⑮イラプト。デビュー以来4連勝でG1パリ大賞(2400メートル ロンシャン競馬場)を優勝したが、前走のニエル賞で凡走したので株が下がってしまった。フランスでは出走頭数が多ければ「2sur4」という拡大ワイド(選んだ2頭が4着まで入ればいい)馬券を売っている。馬場状態が微妙だが、⑬-⑮の「2sur4」が私の勝負馬券である。

肌寒いパリやロンドンに比べれば、秋風がさわやかに感じてきた。秋のG1戦線ははじまり、吉祥寺の居酒屋「青夷」の馬券常連組もいささか熱気をおびてくる。口撃機関銃ヤマなら今さら熱気などいらないのに

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『ワイドの凌』よりひと言

昭和の「エースの錠」が拳銃を片手にのさばってから半世紀が流れた。平成を経て令和の世は馬券を片手に「ワイドの凌」でいきたい。狙い目はできるだけ少なく、基本はあくまでワイド1点勝負。ワイドは当たり馬券が3つもあるのだから、的は見えやすい。馬券は手を拡げると、あの馬も買っておけばよかったと悔やまれる。できるだけ狙い目を絞れば、そんな後悔もせずにすむ。人生は短いのだから、ストレスをかかえこまず、心ゆたかに競馬も馬券も楽しむこと。それがこの世界で長生きする秘訣である。

本村 凌二

1947年5月1日、熊本県八代市生まれ。
東京大学名誉教授。
専門は古代ローマの社会史。専門の近著に『ローマ帝国人物列伝』『一冊でまるごとわかるローマ帝国』

「もし馬がいなかったら、21世紀も古代だった」という想念におそわれ書き起こした『馬の世界史』が2001年JRA馬事文化賞を受賞。その他の競馬関連の近著に『競馬の世界史 - サラブレッド誕生から21世紀の凱旋門賞まで』(中公新書)。20世紀のペンネームは本村雅人。

ハイセイコーが出走した1973年の第40回東京優駿日本ダービーから、第57回を除き、毎年東京競馬場でライブ観戦するなど、日本の競馬にも造詣が深い。
夏から秋にかけてはヨーロッパで過ごす事が多く、ダンシングブレーヴが制した、あの伝説の凱旋門賞や、タイキシャトルが勝ったジャック・ル・マロワ賞。また、シーキングザパールが日本調教馬として初めて海外GI競走を制したモーリス・ド・ギース賞などをも現地でライブ観戦している。競馬と酒をこよなく愛する、知る人ぞ知る競馬の賢人。

伝説の凱旋門賞
勝ち馬ダンシングブレーヴの他、ベーリング、シャーラスタニ他、JCにも参戦した鉄女トリプティク、そして日本ダービー馬シリウスシンボリも含め出走馬15頭中11頭がGI馬という当時としては最強のメンバーが集結したレース。そんな好メンバーの中、直線入り口最後方から全馬をまとめて差し切り勝ち、しかも当時のコースレコードのおまけ付だった。

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