東京大学名誉教授が射抜くワイド1点

[2013年8月18日]

【札幌記念】ゼンノロブロイの洋芝適性

お盆休みの週だった。居酒屋「青夷」も客足がとだえるかと思いきや、意外とどこにも出かけず家でブラブラ組も少なくなかった。こんな時期だと混むし高いしという賢人が多くなったらしい。口撃機関銃のヤマはギャンブル狂でもあるから、連日パチンコ屋通い。愛妻ミナ姉御と連れだって?万円儲かったとご機嫌なのだ。ついでに札幌記念は(14)トウケイヘイローを素直に本命にするとか。重賞勝ち実績、5歳馬以下が中心だから、相手も(3)ルルーシュ(11)ロゴタイプを本線にするらしい。


ところで、イギリスの夏競馬にはG1レースがたっぷりある。南のアスコットと並び称される北のヨークには、まぶしいほどの緑が映える広大で美しい競馬場がある。かつて私も、ローマ帝国最北の辺境にあるハドリアヌスの長城の遺跡を見学した帰りに、3連泊して競馬を楽しんだことがある。


このヨーク競馬場で来週には年間最高級のレースが開催される。なかでも10ハロンのインターナショナルSはよびもの。8年前に日本の古馬最強だったゼンノロブロイが参戦し、ほとんど着差のない2着だった。ここから強引にゼンノロブロイの洋芝適性は証明済ということを引き出しておこう。


そうすると、ロブロイを父とする(3)ルルーシュもまた洋芝は苦手ではないはず。全14戦中10レースが3着以内という堅実さも心強い。夏競馬に消極的な藤沢和雄厩舎が出走させるからには、それなりの目論みがあるのではないだろうか。


それとともに、この父と息子には権力に立ち向かう強靭さがある。ロブロイはイギリスの悪徳貴族に反逆するスコットランドの義賊ロバート・ロイ・マグレガーの通称であり、ルルーシュはアニメ作品「ゴードギアス:反逆のルルーシュ」の主人公の名に由来する。ロブロイは18世紀の実在の人物だが、ルルーシュは歴史SFのなかの創作人物である。ともあれ、反逆義賊の父から反逆児の名を思いついたところに、命名者のそこはかとない教養が感じられる。


相手は夏の牝馬から

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『ワイドの凌』よりひと言

昭和の「エースの錠」が拳銃を片手にのさばってから半世紀が流れた。平成を経て令和の世は馬券を片手に「ワイドの凌」でいきたい。狙い目はできるだけ少なく、基本はあくまでワイド1点勝負。ワイドは当たり馬券が3つもあるのだから、的は見えやすい。馬券は手を拡げると、あの馬も買っておけばよかったと悔やまれる。できるだけ狙い目を絞れば、そんな後悔もせずにすむ。人生は短いのだから、ストレスをかかえこまず、心ゆたかに競馬も馬券も楽しむこと。それがこの世界で長生きする秘訣である。

本村 凌二

1947年5月1日、熊本県八代市生まれ。
東京大学名誉教授。
専門は古代ローマの社会史。専門の近著に『ローマ帝国人物列伝』『一冊でまるごとわかるローマ帝国』

「もし馬がいなかったら、21世紀も古代だった」という想念におそわれ書き起こした『馬の世界史』が2001年JRA馬事文化賞を受賞。その他の競馬関連の近著に『競馬の世界史 - サラブレッド誕生から21世紀の凱旋門賞まで』(中公新書)。20世紀のペンネームは本村雅人。

ハイセイコーが出走した1973年の第40回東京優駿日本ダービーから、第57回を除き、毎年東京競馬場でライブ観戦するなど、日本の競馬にも造詣が深い。
夏から秋にかけてはヨーロッパで過ごす事が多く、ダンシングブレーヴが制した、あの伝説の凱旋門賞や、タイキシャトルが勝ったジャック・ル・マロワ賞。また、シーキングザパールが日本調教馬として初めて海外GI競走を制したモーリス・ド・ギース賞などをも現地でライブ観戦している。競馬と酒をこよなく愛する、知る人ぞ知る競馬の賢人。

伝説の凱旋門賞
勝ち馬ダンシングブレーヴの他、ベーリング、シャーラスタニ他、JCにも参戦した鉄女トリプティク、そして日本ダービー馬シリウスシンボリも含め出走馬15頭中11頭がGI馬という当時としては最強のメンバーが集結したレース。そんな好メンバーの中、直線入り口最後方から全馬をまとめて差し切り勝ち、しかも当時のコースレコードのおまけ付だった。

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