東京大学名誉教授が射抜くワイド1点

[2013年5月19日]

【オークス】あの2頭を切るのは勇気がいるが…

居酒屋「青夷」に立ち寄ったのは遅い時間だった。常連客も去って、カウンターはひっそりしている。なんとはなしにテレビのバラエティ番組を見ながら、焼酎のお湯割りをすする。話題は若いころの恋愛体験になっていた。ある女性タレントは物事をなんでも先走って想像するタイプだと自己分析。十代のころ好きな男の子に「私と付き合ってください」というつもりだったのに、「私を抱いてください」と言ってしまったという。もちろん断られたとか。


それを見ながら、50代のマスターは「でも、今の若い子はケータイがあるからいいよ。俺たちのころは固定だったから、電話してもお目当ての本人が出てくるとはかぎらないし、親が出てくりゃ、と思うとビビったよ」それを聞いていた還暦をとっくに過ぎた男は「いや、俺たちのころは電話をかけるという発想すらなかった。どの家庭にも電話があったわけじゃないから」と言う。マスターは「じゃ、どうやっていたの?」とけげんそう。男は「もっぱら待ち伏せするしかなかった。通りそうな時間と道を狙って」と。かく語る男とは私本人であるから笑い話ではない。


オークスに出走する3歳牝馬などは、十代の小娘みたいなもの。科学技術がいかに進歩したとはいえ、相手が馬なら、今でもケータイどころか電話も通じない。もっぱら狙い馬を待ち伏せするしかないのだ。豊ファンのマスターは(16)クロフネサプライズ、データ派の口撃機関銃ヤマは(14)プリンセスジャックを待ち伏せするらしい。


ディープインパクト産駒4頭が出走し、いずれ劣らぬ有力馬。4頭のワイドボックス6点を買えば、絶対といえるほど当りそうだ。でも

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『ワイドの凌』よりひと言

昭和の「エースの錠」が拳銃を片手にのさばってから半世紀が流れた。平成を経て令和の世は馬券を片手に「ワイドの凌」でいきたい。狙い目はできるだけ少なく、基本はあくまでワイド1点勝負。ワイドは当たり馬券が3つもあるのだから、的は見えやすい。馬券は手を拡げると、あの馬も買っておけばよかったと悔やまれる。できるだけ狙い目を絞れば、そんな後悔もせずにすむ。人生は短いのだから、ストレスをかかえこまず、心ゆたかに競馬も馬券も楽しむこと。それがこの世界で長生きする秘訣である。

本村 凌二

1947年5月1日、熊本県八代市生まれ。
東京大学名誉教授。
専門は古代ローマの社会史。専門の近著に『ローマ帝国人物列伝』『一冊でまるごとわかるローマ帝国』

「もし馬がいなかったら、21世紀も古代だった」という想念におそわれ書き起こした『馬の世界史』が2001年JRA馬事文化賞を受賞。その他の競馬関連の近著に『競馬の世界史 - サラブレッド誕生から21世紀の凱旋門賞まで』(中公新書)。20世紀のペンネームは本村雅人。

ハイセイコーが出走した1973年の第40回東京優駿日本ダービーから、第57回を除き、毎年東京競馬場でライブ観戦するなど、日本の競馬にも造詣が深い。
夏から秋にかけてはヨーロッパで過ごす事が多く、ダンシングブレーヴが制した、あの伝説の凱旋門賞や、タイキシャトルが勝ったジャック・ル・マロワ賞。また、シーキングザパールが日本調教馬として初めて海外GI競走を制したモーリス・ド・ギース賞などをも現地でライブ観戦している。競馬と酒をこよなく愛する、知る人ぞ知る競馬の賢人。

伝説の凱旋門賞
勝ち馬ダンシングブレーヴの他、ベーリング、シャーラスタニ他、JCにも参戦した鉄女トリプティク、そして日本ダービー馬シリウスシンボリも含め出走馬15頭中11頭がGI馬という当時としては最強のメンバーが集結したレース。そんな好メンバーの中、直線入り口最後方から全馬をまとめて差し切り勝ち、しかも当時のコースレコードのおまけ付だった。

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