東京大学名誉教授が射抜くワイド1点

［2016年10月29日］

【天皇賞・秋】改めてその潜在能力に注目

行きつけのスナックのマスターがビデオデッキ付のテレビをもっているので、引きとってもらえばありがたいとの申し出。DVD化されていないビデオをまだ多数もっていたので、再生専用テレビとしてオフィスに置いた。

05年10月のNHKスペシャル「ディープインパクト」は無敗の３冠馬となった直後に放映されたドキュメント。新馬戦ばかりか子馬やセリ市の場面まであり感慨深いが、馬体が小さかったのでそれほど期待されなかったという。でも、池江調教師はすぐにディープの非凡さを見抜いていた。調教で走らせても帰ってくるとすぐに息づかいが整っていた。JRAの研究対象になって心拍数を計測したところ、普通の馬なら10分ほどかかるのにディープは３分で戻ってしまう。この驚異的な心肺機能の高さがディープの強さの秘密なのだ。

吉祥寺の居酒屋「青夷」のマスターは逃げる女を追うかのごとく逃げ馬好き。天皇賞は国際G1級の快速馬①エイシンヒカリが絶好の最内枠に入り、もはやこれを狙うしかない。いつも夕方早々から酒杯を片手に喧しく競馬談義にはげむ２人組は③アンビシャスか⑨ルージュバックかと口角泡をとばす。熱血データ派の口撃機関銃ヤマはこのところ馬券が好調らしく自信ありげに③を押し、沈着データ派のギャンブル狂師ミノ先生は東京実績抜群を頼りに⑨に肩入れするらしい。マハッタンカフェ心中派の熟女馬券師ワフさんはもちろん⑨以外は眼中にない。人気の⑧モーリスは名手ムーア騎乗でも誰も軸にはしないようだ。

11年前のNHKスペシャルをあらためて見ると、やはりディープインパクト産駒に秘められた潜在能力の高さには魅かれるものがある。底力が問われるG1レースだから、産駒の４-５歳馬を拾うと、

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『ワイドの凌』よりひと言

昭和の「エースの錠」が拳銃を片手にのさばってから半世紀が流れた。平成を経て令和の世は馬券を片手に「ワイドの凌」でいきたい。狙い目はできるだけ少なく、基本はあくまでワイド１点勝負。ワイドは当たり馬券が３つもあるのだから、的は見えやすい。馬券は手を拡げると、あの馬も買っておけばよかったと悔やまれる。できるだけ狙い目を絞れば、そんな後悔もせずにすむ。人生は短いのだから、ストレスをかかえこまず、心ゆたかに競馬も馬券も楽しむこと。それがこの世界で長生きする秘訣である。

本村 凌二

1947年5月1日、熊本県八代市生まれ。
東京大学名誉教授。
専門は古代ローマの社会史。専門の近著に『ローマ帝国人物列伝』『一冊でまるごとわかるローマ帝国』

「もし馬がいなかったら、２１世紀も古代だった」という想念におそわれ書き起こした『馬の世界史』が2001年ＪＲＡ馬事文化賞を受賞。その他の競馬関連の近著に『競馬の世界史 - サラブレッド誕生から21世紀の凱旋門賞まで』(中公新書)。２０世紀のペンネームは本村雅人。

ハイセイコーが出走した1973年の第40回東京優駿日本ダービーから、第57回を除き、毎年東京競馬場でライブ観戦するなど、日本の競馬にも造詣が深い。
夏から秋にかけてはヨーロッパで過ごす事が多く、ダンシングブレーヴが制した、あの伝説の凱旋門賞や、タイキシャトルが勝ったジャック・ル・マロワ賞。また、シーキングザパールが日本調教馬として初めて海外ＧＩ競走を制したモーリス・ド・ギース賞などをも現地でライブ観戦している。競馬と酒をこよなく愛する、知る人ぞ知る競馬の賢人。

伝説の凱旋門賞
勝ち馬ダンシングブレーヴの他、ベーリング、シャーラスタニ他、ＪＣにも参戦した鉄女トリプティク、そして日本ダービー馬シリウスシンボリも含め出走馬15頭中11頭がＧＩ馬という当時としては最強のメンバーが集結したレース。そんな好メンバーの中、直線入り口最後方から全馬をまとめて差し切り勝ち、しかも当時のコースレコードのおまけ付だった。

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