元競馬学校教官・蓑田早人の蓑田塾

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騎手の動きが作った波乱と金星

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こんばんは。蓑田です。

アサマノイタズラでセントライト記念を制し、今年2つ目の重賞勝ちとなった田辺裕信騎手は、私が教官になった年に2年生だった18期生。

19期生からは入学から担当していたが、田辺らの18期生は途中から担当を引き継ぐ形になったので、なかなか難しい点もあった。競馬学校の教官だってそれぞれに考え方の違いがあるし、これを去年教えなかったのか、こういうことを注意してこなかったのか、ということはたくさんあった。生徒の方も教える側の姿勢が変わると戸惑うことがあったと思う。

中でも一つ18期生の担当を引き継いだ時に驚いたこととして覚えているのが、ムチの持ち替えを教わっていなかったこと。これは1年の時の乗馬の先生の責任だったが、2年目になって教えるのは大変だった。

ちなみに、競馬学校というのは、私のような教官と呼ばれる立場の人間が全てを教える訳ではない。普通の学校も教科によって先生が違うように、乗馬の先生、競走馬の先生など、基本的に4人くらいチームで生徒を教えていたんだ。

私が教官だった頃は布施勝という、オリンピックにも出場したことのある馬術の選手が乗馬の担当として一緒に生徒を教えてくれていた。彼とはしっかり連携しながら指導ができていて、私の生徒が騎手としてしっかり活躍しているのは、彼のおかげでもある。

馬術の中でも、馬場馬術よりも総合馬術の方が、競馬に繋がる技術が多い。布施は総合馬術の方の選手だったので、良い指導をしてくれていたんだ。

話を戻して、田辺は土曜日に7鞍騎乗して2着と3着が1回ずつ。人気での大敗もいくつかあったが、ノリほど極端じゃないが決め打ちをするタイプなので大負けがあるのは仕方ない。

日曜日はなぜか2鞍しか騎乗がないが、オールカマーゴールドギアはセントライト記念のアサマノイタズラと同じように、展開が向けば無欲の追い込みが決まりそうなタイプ。

そして、もう1頭は3Rオンザロード。こちらは新馬戦3着だったが、左右にフラついたりして相当危なっかしい内容だった。ただ、こういう馬でもブーブー言いながらキッチリ修正してくるのが田辺の上手いところ。追い切りにも乗っていたようだし、2戦目での勝ち上がりを期待したい。

日曜の騎乗一覧と評価

レース条件馬名評価
中山3R芝1800mオンザロードA
中山11R芝2200mゴールドギアB


先週は新人騎手、減量のある若手騎手はダート戦や短距離戦の方が勝ちやすいという話をしたが、小沢大仁は勝ち星こそ無かったが期待していたダート1400m戦のヒロノクイーンで2着に好走。

永野猛蔵は中山ダート1200m戦をサイファーシチーで勝利し、角田大和は中京ダート1200m戦をナツイロノオトメで勝利。傾向通りといえばそれまでだが、先週も新人たちの活躍はダートの短距離戦で目立った。

そして、園田で勝った永島まなみも良い競馬だったね。あんなに積極的な競馬ができるようになっていたとは思わなかった。せっかく4キロ減があるんだから、中央でももっと強気な競馬を見せてもらいたい。

先週の重賞はどちらも波乱含みの結果になったが、セントライト記念は騎手の差が出たようなレースだったように思う。

勝ったアサマノイタズラは、田辺の欲の無い乗り方というか、馬任せに運んだことが活きた。道中で余計なことをしなかったので、勝負どころからの脚がしっかり残っていたのだろう。

逆に、途中で焦って動いて大敗した馬に乗っていた騎手たちは反省した方がいい。レースには、絶対に動いてはいけないタイミングというのがあるが、セントライト記念はそういうところで動いた馬がいた。

タイトルホルダーのように、他馬の動きに巻き込まれて不完全燃焼な競馬になってしまった馬もいたし、セントライト記念は騎手が生み出した波乱だったんじゃないかと思うよ。アサマノイタズラも上位馬がそれぞれ力を出し切っていたら、勝つまではなかったかもしれないからね。


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蓑田早人・プロフィール

卓越した騎乗技術を武器に、騎手として北海道などローカル開催を中心に活躍。引退するまで、日本騎手クラブ副会長を務めるなど騎手の地位向上にも尽力。その後、競馬学校の専任教官へ就任(石橋脩騎手ら第19期生より指導を担当)。川田将雅騎手、松山弘平騎手をはじめ、吉田隼人騎手、三浦皇成騎手、藤田菜七子騎手など教え子が多くいる。

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