いやあ、底冷えする季節になったもんじゃ。年末のこの空気、肌に刺さるわ。 それにしても最近の競馬場は、えらく静かになったもんやな。パドックを見渡しても、若いのんが皆、手元の板っぺら……スマホ言うんか？ あればっかり睨めっこして、目の前の馬を見とらん。馬の気配、蹄の音、騎手の表情、そういう「生」の情報がそこにあるっちゅうのに、画面の中の数字ばっかり追いかけよって。

ワシが若かった頃の仁川（阪神競馬場）や淀（京都競馬場）は、もっとこう、鉄火場の熱気が渦巻いとったもんじゃ。 寒風吹きすさぶスタンドで、新聞紙を座布団代わりに敷いてな。そこら中から「差せぇ！」「残せぇ！」いう野太い野次が飛んでくる。負けて懐が寒くなりゃ、湯気の立つホルモンうどんを啜って暖を取る。あの出汁の匂いと、オッサンらのタバコの煙が混じった独特の空気が、ワシの競馬の原風景や。

便利になるのは結構やが、あの泥臭い熱量までデジタルの波に洗われてしもうた気がして、少し寂しい気分になるのは、ワシが年食うた証拠かもしれんの。ま、ボヤいても始まらん。ワシはワシの流儀で、赤鉛筆一本、勝負するだけじゃ。

今週の眼 有馬記念 (G1)

さて、いよいよ有馬記念（G1）や。 世間じゃやれデータだ、やれAI予想だと騒いどるが、そんなもんワシには関係ない。「馬を見るな、枠を見ろ」。これがワシが30年かけて辿り着いた、唯一無二の真理じゃ。

今の若い衆は知らんかもしれんが、昔は馬連なんぞなかった。枠連しかなかったんや。 なんで枠連がエエか分かるか？ 「保険」が効くんよ。 単体で馬を見るんやない。その枠に入った2頭、運命共同体としての「枠」を見るんじゃ。片方がコケても、もう片方が突っ込んでくれりゃ当たり。この安心感こそが、長丁場の競馬人生を生き抜く秘訣や。

特に有馬記念みたいな大一番は、理屈じゃない「運」や「流れ」がモノを言う。 中山の2500m、トリッキーなコースじゃ。展開一つでどうとでもなる。 こういう時こそ、細かいタイムや調教時計に惑わされたらアカン。枠の並びと、その枠が持つ「色」の力を見るんじゃ。8つの枠、8つの色。そこに神様が宿るんじゃよ。

ほな、ワシの結論を言うてこまそうか。

本命枠は2枠じゃ。理由はな、理屈やない。 さっき、ふと目を閉じてゴール前の光景を想像してみたんじゃ。 中山の急坂を登り切って、残り200m。 緑（6枠）、赤（3枠）、白（1枠）、黒（2枠）の帽子が競り合うとる。 「さぁ、何がアタマでゴールするんや」と念じてな、最後に残った色が「黒」やったんじゃ。

2枠にはエエのが入った。 まずはミュージアムマイル。3歳馬やが、中山で重賞2勝の実績は伊達やない。成長度ならこの馬が一番じゃろう。 そんで相方のジャスティンパレス。こっちは6歳とベテランやが、まだまだ衰え知らずじゃ。 若いのをベテランが上手いことフォローする。これぞ枠連の醍醐味、ええコンビやないか。

編集後記 ～ピュアな心で～

ふぅ、書き切ったわ。 予想を終えると、心地エエ疲れがくるもんじゃな。 さて、レースまではまだ時間がある。久しぶりに押し入れから引っ張り出してきた、昭和60年のプロ野球選手名鑑でも眺めながら、ゆっくりラジオでも聴くとするか。

あの頃の選手は、成績よりも「顔」で勝負しとったような気がするわ。 皆も、ええ有馬記念を。ほな、また来週じゃ。