オールカマー(中山・芝2200m)は、交流重賞がなかった時代には地方の強豪馬が中央の重賞にチャレンジするかつ少ない舞台として、近年は天皇賞秋、エリザベス女王杯、ジャパンカップといった秋のビッグレースに挑む馬の始動戦として重要なポジションを占めるレース。
今年も3冠牝馬デアリングタクトを筆頭に楽しみなメンバーとなりそうですが、ここで取り上げる
ヴェルトライゼンデは、今年のオールカマーにおいて触れないわけにはいかない1頭です。
今年の登録馬を見ると、一昨年の皐月賞から2年5カ月ぶりの出走となるクリスタルブラック、昨年の中山記念から1年7カ月ぶりの出走となるバビットが長期休養からの復帰戦となります。
ヴェルトライゼンデの前走・鳴尾記念は、昨年のアメリカジョッキークラブカップから1年4カ月ぶりの実戦で見事に勝利。これはJRAの平地重賞最長間隔となる「中70週」での勝利でした。先の2頭には記録更新の期待もかかりますが、調教過程と相手関係から今回は厳しいと判断します。
■長期休養明けの平地重賞勝ち馬
中70週 ヴェルトライゼンデ 22年鳴尾記念
中65週 スズパレード 88年オールカマー
中57週 パフォーマプロミス 20年鳴尾記念
中55週 シャケトラ 19年アメリカJCC
中54週 サクラローレル 96年中山記念
それまでの記録を持っていたのは、1988年にこのオールカマーを勝ったスズパレードの中65週で、超が付く長期休養明けの馬が2頭出走するレースに、奇しくも長期休養明けの新記録を作ったヴェルトライゼンデが出走してきたのです。
元々デビューから2連勝を飾り、ホープフルステークス2着、日本ダービー3着など世代屈指の実力を持っていた馬ですが、意外にも前走の鳴尾記念が重賞初勝利。中団から力強く抜け出したレースぶりは、長いブランクによって能力が錆びつくこともなく、改めてその実力を証明するのに十分なものでした。
この中間は8月下旬に栗東へ帰厩。目標は先にあるとはいえ、ここまで入念に攻めを積まれ、坂路で水準の時計をマーク。しっかり力が出せる状態に仕上がっています。何より1年4カ月のブランクがあった前走より順調にレースに出走できる臨戦過程は上でしょう。
また、中山コースでは勝鞍こそないものの、ホープフルステークス、スプリングステークス、アメリカジョッキークラブカップで各2着。コース相性も悪くありません。
一方で、人気の一角を占めるデアリングタクトは中山コースが初めてで、今年のヴィクトリアマイルで1年1カ月ぶりの復帰を果たすも結果は6着。続く宝塚記念も3着までと、無敗で3冠を制した秋華賞から勝利が遠ざかっており、牡馬との対戦では詰めの甘さも見せています。
長期休養明けが話題となるレースでヴェルトライゼンデが完全復活となるか? その可能性はかなり高いと見ます。
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