師走も半ばを過ぎて、ほんまに冷え込んできたのぉ。街を歩けば、どいつもこいつも首を垂れて、光る板っ切れなんぞを必死に見つめとる。前を向いて歩かんかい、前を。あれじゃあ、運も逃げていくっちゅうもんや。
ワシが若い頃、冬の仁川や淀なんちゅうのは、そらもう芯まで凍える寒さやった。今のガラス張りスタンドみたいな温室とはわけが違う。寒風吹きすさぶ中、紙コップに注がれた薄いお茶を知っとるか? うどんなんて馬券が当たった時のご褒美や。出汁は薄いし、麺はコシもへったくれもないフニャフニャや。せやけど、あの熱いうどんと一味唐辛子、そしておっさんらの野次が、冷え切った体を温めてくれたもんや。今の競馬場も綺麗にはなったが、あの頃の「鉄火場」の熱気ちゅうもんが、ちと足りんような気がするわ。
ま、昔話をしてても銭は増えん。ワシの仕事は、経験と勘で勝ち馬…いや、「勝ち枠」を見つけることや。
今週の眼 朝日杯FS (G1)
さて、今週は2歳マイル王決定戦、朝日杯フューチュリティステークスや。阪神の芝1600m、若駒たちの戦いやな。
最近の若いモンは、すぐにデータだのタイム指数だのと、数字ばかり並べ立てよる。あんなもんは、レースが終わってからこじつける理屈に過ぎん。特に2歳戦なんちゅうのは、馬の精神状態も完成度もまだまだヒヨッコや。走ってみんと分からん部分が大半を占める。
そこで重要なんが「枠」なんじゃ。「馬を見るな、枠を見ろ」。これがワシの流儀や。
馬単だの3連単だのが幅を利かせてるが、あれは点数ばかり増えて、外れた時の痛手がデカい。その点、枠連はええぞ。なんせ「同枠のもう一頭」が走っても当たりなんやからな。ワシはこの仕組みを「保険」と呼んどる。本命の馬が出遅れても、隣の馬が突っ込んでくれば、それでええ。これぞ、長く競馬と付き合うための知恵っちゅうもんや。
今回の朝日杯、阪神のマイル戦は外枠不利と言われるが、ワシはそうは思わん。要は枠の並びと、鞍上の腕や。未熟な馬を御すのは、結局は人間の腕力と胆力なんや。
ほな、結論といこか。 ワシの赤鉛筆が止まったのは、【5枠】 や。
ここにはデイリー杯2歳Sで2着に入ったカヴァレリッツォがおる。世間様の人気はこっちにあるかもしれんが、ワシが目を付けたんはもう一頭の方、コルテオレイユや。 こいつも中々の素質馬やぞ。何より、鞍上に川田が乗っとる。この阪神マイル、そしてこのレースと川田の相性は抜群や。 5枠は、人気馬と実力馬が同居する、まさに「鉄板」の並びになっとる。どっちが来てもエエ、この安心感が枠連の醍醐味ちゅうもんや。買い目はこうじゃ。
【最終結論】
ごちゃごちゃ言わん。
今週はこの「枠」で勝負だ。
朝日杯FS (G1)
相手を絞るなんてセコい真似はせん。2歳戦は何が飛び込んでくるかわからん「魔物」が住んどる。変な人気薄が突っ込んできても取りこぼさんよう、5枠から全部へ流す。これが一番、「負けん」買い方なんや。
編集後記 ~ピュアな心で~
ふぅ、書き上げたら腹が減ってきたわ。
予想が終わった後のこの脱力感が、たまらんのよな。今夜は熱燗でもやりながら、ラジオでも聴くとしようか。
そういえば、押し入れの奥から昭和50年代の選手名鑑が出てきてな。カドやチャイの顔写真を見ながら、チビチビやる酒もまた乙なもんや。ほな、お前さんも風邪ひかんようにな。また来週。
