元競馬学校教官・蓑田早人の蓑田塾

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こんばんは。蓑田です。

今週のG1は東京に舞台を移してのNHKマイルカップ。

かなりの混戦で、可能性のある馬を挙げていくとキリがない。そこで個人的には中心は5頭に絞ってみようと思う。

それがエエヤン、カルロヴェローチェ、ドルチェモア、オオバンブルマイ、タマモブラックタイの5頭。

心情的には皇成がG1を勝つところを見てみたいが、馬券的には幸英明騎手が騎乗するタマモブラックタイが穴っぽいね。

前走のファルコンSでは実際にカルロヴェローチェを破っている訳で、能力は持っているはず。道悪実績があってダートも走らせていたくらいで、馬場が悪くなるのも好材料だろう。

人気がないのは前走が人気薄だったことに加えて、マイルでの実績がないからだろう。ただ、距離適性というのは経験を積んで変わってくることもあれば、厩舎の仕上げ方次第で成長させることもできる部分だと思っている。

今でも印象に残っているのが天皇賞を勝ったメジロアサマ。あの馬はずっとマイルまでの馬だと言われていたが、成長とともに距離不安を克服して3200mの天皇賞を勝ったんだよ。

タマモブラックタイも新潟2歳Sで9着に負けた時とは馬自身が変わっている。こなしても不思議ではないよ。

幸英明騎手はあまりG1騎乗にこだわるタイプではないという印象だが、今週はタマモブラックタイのために東京入り。さすがの人徳と実績いうか、一流騎手が揃っている日曜の東京でも7鞍の騎乗を集めている。

8Rのゼットノヴァは厩舎が幸の遠征に合わせてくれたような感じ。普段より100m長い東京の1300m戦になるが、末脚があるのでむしろ合うかもしれないね。

日曜の騎乗一覧と評価

レース条件馬名評価
東京5Rダ1400mテンコマンドゥールC
東京7R芝1400mデヴィルズマーブルB
東京8Rダ1300mゼットノヴァA
東京9R芝1600mシャチC
東京10R芝2400mディアマンミノルB
東京11R芝1600mタマモブラックタイA
東京12Rダ1600mサイモンルモンドB


私の立場からも、触れない訳にはいかないと思う。

大きく話題になっているので既にほとんどの競馬ファンは事の次第を知っていると思うが、女性騎手を中心に6人が開催中のスマホの使用で騎乗停止処分を受けた件だ。

元々は、私が現役だった頃だからもう大昔の話になるけども、携帯電話が普及し始めた頃は調整ルームに入る時に携帯を預けることになっていたんだ。

ただ、私が騎手会の副会長だった時に、個人のものだしプライバシーなんかもあるから、強制的に没収されるのはおかしいんじゃないかと提言したんだよ。それから、今のように騎手の自覚と信頼に任せてもらって、自分の手で持っておくことは許可されるようになったんだ。

他の公営競技はもっと厳しいし、何といっても公正競馬という根幹が崩れてしまったら競馬が成り立たなくなる。だから当時は競馬会の方も「騎手自らで本当にしっかり管理できるのか」と言ってきたし、こちらも「責任を持って徹底させます」と約束して、今の形を続けてこられたわけだよ。

その、長い間、騎手みんなで守ってきて続けてこられたルールなのに、ついに今回のようなことを起こしてしまった。

以前にこういうことが全く無かった訳ではない。免許を取りたてだったルメールがその辺りの規則を知らずに処分を受けたり、丸山が厩務員にお祝いのメールかなにかをして処分を受けたりと、悪気のない、突発的なことはあったし、その時も規則通り騎乗停止処分はしていた。

ただ、今回は話を聞く限り、スマホを持って、普通に使うというのが常態化していたというか、緩んでなあなあでやっていた感じを受けるからね…。

とはいえ、ルール自体を見直すべきという考え方ももっともだとは思うね。電話とせいぜいメールくらいしかなかった頃の携帯電話と、現代のスマートフォンとでは、もはや全く価値や役割が違う。若い騎手たちにとっては生活必需品のようなものだろう。

今は競馬会がどれくらいの規制をしていたのかも気になるけどね。例えば、競馬場には携行自体がダメなのか、電源を切っていれば大丈夫なのか、それとも電話やネットなど通信機能を使わなければ許されるのか。今は競馬に関する情報だってスマホやタブレットで見るんだろう。

とはいえ、せっかく競馬が盛り上がって、世間的にも広く受け入れられつつある今、起こしてはいけない事件だった。

個人的には1か月では全然短い。どうしてこのルールがあるのか、しっかり自覚させるためにも、3か月、半年の処分くらいでも良いと思っている。

この一件を皮切りに、競馬も今後は通信機器を強制的に没収という形に変えられてしまうかもしれないし、今後はスマホなどの扱いや、ルールそのものを現在の状況に合うように変えていかないといけない、そういう時期なのかもしれないね。

とにかく、せっかく女性騎手が活躍が目立つようになり、このコラムでも永島まなみ騎手や今村聖奈騎手の活躍を取り上げていたところだったので、本当にこういう形で注目を浴び、騎乗停止になったのは残念なことだよ。

ただ、処分を受けた6人はまだまだ若いし、これで騎手として終わりになることはないはずだ。若いうちに一つ失敗したことで今後は騎手としての自覚や責任を強く持って、成長の糧にするくらいにしてほしい。

本音を言うと、こういうことが起こってしまったのが情けない限りだし、周りも今回に関しては女の子だからと思わずちゃんと叱ってあげないといけないと思うけどね。

女性騎手の中で、唯一大丈夫だったのが年長の藤田菜七子騎手だった。女性騎手が一人しかいない時代から頑張ってきただけあって、こういうことでの自覚はしっかり持てていたのかもしれない。

さて、まだまだ言いたいことは無限にあるんだが、このままだと際限なく続いてしまうね。ひとまず今日はここまでにしようか。来週は、もう少し将来への建設的な話をするかもしれません。


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蓑田早人・プロフィール

卓越した騎乗技術を武器に、騎手として北海道などローカル開催を中心に活躍。引退するまで、日本騎手クラブ副会長を務めるなど騎手の地位向上にも尽力。その後、競馬学校の専任教官へ就任(石橋脩騎手ら第19期生より指導を担当)。川田将雅騎手、松山弘平騎手をはじめ、吉田隼人騎手、三浦皇成騎手、藤田菜七子騎手など教え子が多くいる。

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