元競馬学校教官・蓑田早人の蓑田塾

元教官・蓑田早人の蓑田塾

思い入れの深い生徒の一人

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こんばんは。蓑田です。

今週は浜中俊について取り上げてみようと思う。

日曜日の重賞レパードSに出走するホッコーハナミチは、騎乗する浜中だけでなく、管理する長谷川浩大調教師も競馬学校の教え子なんだ。長谷川は松岡、石橋脩らと同じ19期生で、私が受け持った最初の代になる。

19期生は9人がデビューしたが、長谷川はずっと同期の中で親分のようなキャラだったな。そういう意味では調教師になって先生と呼ばれるのが合っているかもしれない(笑)。そういうところがあるので厩舎のスタッフとは上手くやっているといいんだが…。

この代は加藤士津八も既に調教師になっているが、試験に受かったのは加藤の方が1年先。その時に長谷川が「先を越された」と泣いていたのを覚えているよ。

話を戻して、ホッコーハナミチは鞍上も厩舎も教え子という贔屓目を抜きにしても勝ち負けが狙える1頭だろう。前走が小倉のレコード勝ちでレパードSも雨で時計が速くなれば有利になる。父のホッコータルマエが勝っているというのも好材料だろう。

浜中は勝ち星こそ一番良かった頃と比べて減っているが、勝率や連対率は悪くなっていないし、私が見る限りでは騎乗が変わったとか、フォームが悪くなったということもない。単純に巡り合わせや騎乗機会に恵まれていないだけなんだろう。ダービーだって一昨年勝っているからな。

浜中については競馬学校に受かる前から色々なエピソードがあって思い入れの深い生徒の一人なんだが、それについてはまた後日に。日曜日は3鞍だけだが、10R、11R、12Rと良いところで良い馬に乗っている。

一番応援したいのはホッコーハナミチだが、10Rのダディーズトリップ、12Rのリュクスフレンドも浜中が上手く乗れば勝ち負けに持ち込めそうな絶妙な立場。こういう馬で結果を出せば次第に良い馬が回ってくる頻度も増えてくるだろう。

日曜の騎乗一覧と評価

レース条件馬名評価
新潟10R芝2000mダディーズトリップB
新潟11Rダ1800mホッコーハナミチA
新潟12R芝1600mリュクスフレンドB


先週のコラムで注目騎手として取り上げた大野拓弥騎手が、サトノセシルに騎乗したクイーンSで3着に好走。他にも土曜メインの勝利あり、騎乗停止あり、落馬ありと色々な意味で目立つ週になった。

騎乗停止はともかく、こうやって注目した騎手が結果を出してくれると嬉しいものだ。

乗り難しいタイプなので今までは気分よく行かせる形で結果を出していたサトノセシルだが、クイーンSでは後方に控える形。これは意外だったが、それで一層大野の腕が引き立つレースになったと思う。

クイーンSは向正面での折り合いの付け方がとても上手くて、あの時点でコレなら馬券になると思って見ていたよ。実際はかなり引っ掛かっていたはずだが、大野のテクニックで上手く抑え込んでいたので、普通のファンには何事もなく折り合えているように見えていたんじゃないかな。

馬の折り合いの付け方には3つのテクニックがあり、今回の大野のは“馬の口に逆らわない”というやり方。馬の行く気に合わせながら、譲り過ぎることもなく、引っ張り過ぎることもなく、喧嘩しないように、なおかつ良いリズムを保って運んでいた。

これは上手く肘とこぶしを同調させながら、馬に自由にさせているようで実際はちゃんとコントロールしているという高等テクニック。ヨーロッパのジョッキーに多い乗り方でルメールなんかも上手いが、折り合いの難しい馬でああやって乗れるのは、相当自信があったということだと思うよ。

ついでに、残り2つのテクニックにも触れておこう。

まずはモレイラなんかが特に印象的な、こぶしを上げずに前後だけで折り合いを付けるテクニック。これは腕力で抑え込むというか、馬を従えるというやり方で、半端な騎手ではなかなか上手くはいかない。

もう一つが、手首だけで折り合いを付けるというテクニック。これは競馬学校でも最初に徹底的に教え込む基本のやり方だ。まずはこれをしっかり習得してから、実戦で馬の性格、ハミ受けの敏感さに応じて3つのテクニックを使い分けていくことになる。

この3つを自由に扱えるのが上手い騎手の証拠。直線に向いてからの派手なアクションじゃないので普通の競馬ファンはあまり意識しないと思うが、こういうことをしっかり出来ている騎手ほど見ていて安心できるし成績も上がっていくものだ。サトノセシルも向正面で折り合いに失敗していたら直線のあの末脚は無かっただろう。

騎乗停止になったレースについても少しだけ。あれは勿体なかったな。

外に出そうとして、一度は相手の動きに気付いて止めたのに、そこから相手が引いてくれると思ったんだろうな。再び外に出そうとしたところで相手も同じスペースを狙ってきたので斜行を取られてしまった。

ああいうのは兼ね合いが難しくて、今回の場合は両方が同じ場所を狙ったけど、相手が真っすぐ来ているのに対して大野は外に振る形だったから加害馬ということになってしまった。相手も少しは内に行ってるんだけどな。

ルールが変わって大野の騎乗停止は来週から。土曜日もメインで2着があったが、日曜日は8鞍に乗っていて2~3勝は出来るかもしれないラインナップだ。休み前に良いところを見せてもらいたい。



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蓑田早人・プロフィール

卓越した騎乗技術を武器に、騎手として北海道などローカル開催を中心に活躍。引退するまで、日本騎手クラブ副会長を務めるなど騎手の地位向上にも尽力。その後、競馬学校の専任教官へ就任(石橋脩騎手ら第19期生より指導を担当)。川田将雅騎手、松山弘平騎手をはじめ、吉田隼人騎手、三浦皇成騎手、藤田菜七子騎手など教え子が多くいる。

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