元競馬学校教官・蓑田早人の蓑田塾

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可愛い子には旅をさせよ

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こんばんは。蓑田です。

今年で4年目を迎える35期生は岩田望来、菅原明良、団野大成らがいて将来有望という話は何度もしてきたが、意外とまだ詳しく触れていなかったのが斎藤新騎手

勝利数は100勝を少し超えたところだけど、実は35期生の中で一番早く重賞を勝っている。今年は中山金杯を師匠の安田隆行厩舎のレッドガランで勝って、幸先の良いスタートを切った。

斎藤新が斎藤誠調教師の息子というのは競馬ファンなら普通に知っていることだと思うけど、なぜ斎藤誠厩舎の所属にならなかったどころか、親と離れて栗東所属でのデビューとなったのか。

これは、最初に斎藤誠調教師の方から「騎手として大成するには栗東に行った方がいい」と打診があったんだ。栗東の方が減量騎手に多くのチャンスが与えられるということもあるし、美浦で一緒にいると甘えが出るとか、周りからの見られ方が良くないという懸念もあったようだ。

実は、具体的な名前は出さないけど、美浦の厩舎関係者の子供が騎手になる時に栗東行きを打診しても「自分の目が届くところにいてほしい」と言われて美浦からのデビューになることが私が担当していた時にも何例かあったんだ。それを踏まえると、斎藤誠調教師の心意気はすごいよ。

そして斎藤新がハイレベルな世代の中で埋もれずに頑張れている影の立役者の一人が、今は調教師になっている安田翔伍なんだ。

安田隆行調教師の息子で、斎藤新が見習いとして安田隆行厩舎に来た時からよく面倒を見てくれていたそうだ。それで、川田の時もそうだったけど弟子の騎手にはどうしても甘くなってしまう安田隆行調教師に替わって、お坊ちゃん気質でフワフワしたところのあった斎藤新のことをビシビシ鍛えてくれたんだよ。

ちなみに、斎藤新のここまでの全113勝のうち、なんだかんだ斎藤誠厩舎の馬で17勝と最も多く勝っている。可愛い子には旅をさせよとばかりに栗東に放り出しながらも、厩舎として手厚いバックアップはしているということだね。

日曜日は中山で騎乗。京成杯には騎乗しないが、その前のジャニュアリーSにお手馬のオヌシナニモノがいる。中山遠征の第一の理由はこれだろう。

ただ、斎藤新が中山に来ることを知ってか、斎藤誠厩舎も2頭を息子のために用意している。親子とはいえ所属が東西で違うのにこれだけ勝っているのはこういうところなんだろうね。

1頭目は6Rの新馬戦で騎乗するホウオウノーサイド。ツーデイズノーチスの産駒でセレクトセールでは1億円近い値が付いたそうだ。2頭目は7Rスキャッターシード。昨夏の新潟以来になるけど、こうやって斎藤新の中山入りを待って仕上げていたんだからデキはちゃんとしてるんじゃないかな。

こうやって自厩舎の馬を息子に任せられるのも、ここまでしっかりと成績を残してきたから。全然勝てないのに厩舎の良血馬に息子を乗せようとしても、馬主が納得しないだろうからね。

日曜の騎乗一覧と評価

レース条件馬名評価
中山1Rダ1200mムーンワードB
中山3Rダ1800mシャンダスC
中山5R芝1600mクインズステラB
中山6R芝1600mホウオウノーサイドA
中山7Rダ1200mスキャッターシードA
中山8Rダ1800mメイショウムートC
中山9R芝1200mグッドマックスB
中山10Rダ1200mオヌシナニモノA
中山12R芝1200mスイーツマジックB


先週取り上げた2年目の横山琉人騎手が日曜日のイカロス、月曜日のエテルナメンテで2勝を挙げてくれた。日曜日は10番人気での3着も2回あり、ファンにも厩舎関係者にもかなりのアピールになったんじゃないかな。

こうやって取り上げたタイミングで活躍してくれると嬉しいものだし、先週話したように技術的には先に勝ち星を伸ばした同期の騎手に全くヒケを取らない。この調子で行けばどんどん騎乗数も勝ち星も増えていきそうだ。

早速先週の活躍の効果が出たのか、今週は土曜7鞍、日曜9鞍と、おそらくデビュー以来一番の騎乗機会に恵まれた。まだまだ永野、小沢、角田と比べると競馬ファンの注目度は低いし、馬券的にも琉人を狙うなら今がチャンスだろうね。6Rで乗る新馬のジュレップグラスは3キロ減を活かして積極的に行ければチャンスだ。

さて、先週の競馬で気になったのがシンザン記念。1番人気で7着に敗れたラスールはパドックを見てすぐに馬券は消しでいいと感じたね。

私はパドックで馬を見る時はトモのリズムを特に大事にしていて、こういう文章だけのコラムでは説明し切れないところがあるんだけど、良くない馬はトモから後ろ脚の運びのリズムが一定じゃないというか、左右のバランスが悪い。

ラスールは2戦目で仕上がり途上だったのか、それとも輸送の疲れがあったのか、パドックだけで今回は良くないと断言できるほどだった。こういうことも当日のレース前に皆さんに説明したり、具体的に今後に活かせるような解説ができればもっといいんだけどね。

あとは僅差の4着だったビーアストニッシド。今回は中団から進めたせいか、かなり行きたがって折り合いを欠いていた。ああいう馬は長手綱で乗る騎手だと抑えるのが大変なはず。あの競馬でも3着争いになったように力はあるし、例えばルメール、デムーロのように短い手綱でしっかり抑える騎手に替われば一気に競馬ぶりが良くなるかもしれないよ。

今週日曜日の重賞にも少し触れておくと、日経新春杯クラヴェルと、穴でマイネルウィルトスに注目している。ステラヴェローチェはデムーロのことがちょっと気になるね。目先の1勝に目が眩んで先々の信頼を失うようなことがなければいいが…。

逆に、思わぬチャンスが巡ってきたのはマイネルウィルトスに乗ることになった川須栄彦騎手。ここのところは馬の上でバタバタし過ぎるというか、馬よりも自分が先に動いてしまうようなところがあって、それが成績にも表れているんだけど、今回は棚ぼたの重賞騎乗だと思って力まずに乗ってもらいたい。

京成杯はテンダンス、ヴェールランス、アライバル辺りが能力的には上だろうけど、私の立場からすると団野が乗るヴェローナシチーや武史が乗れなくなって松岡に乗り替わるサンストックトンもちょっと応援したくなるね。


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蓑田早人・プロフィール

卓越した騎乗技術を武器に、騎手として北海道などローカル開催を中心に活躍。引退するまで、日本騎手クラブ副会長を務めるなど騎手の地位向上にも尽力。その後、競馬学校の専任教官へ就任(石橋脩騎手ら第19期生より指導を担当)。川田将雅騎手、松山弘平騎手をはじめ、吉田隼人騎手、三浦皇成騎手、藤田菜七子騎手など教え子が多くいる。

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